日本の古い物語を琵琶語り。国選択無形文化財「肥後琵琶」
玉名郡南関町は江戸時代より肥後(熊本県)と筑後(福岡県)の関所のある交易の中心地でした。熊本の玄関口として様々な文化が交流し、色濃く残る町です。その中でも江戸時代末期に発祥した1流派である「玉川流」の中心地として平成のはじめまで現役の肥後琵琶師の人が住んでいた稀有な町です。南関町久重にある堀京順師の墓碑は琵琶の形をしており、この地で琵琶が息づいていたことを感じさせます。
そもそも肥後琵琶とは国選択の無形文化財の一つで、肥後の名前を持つように熊本を中心に演奏されていた芸能の一つです。1674年に京都より平家琵琶の名人である岩船検校を当時の肥後藩主である細川家が招いて、「菊池くずれ」という物語を作り、琵琶語りしたことが発祥とされます。そのほか九州の軍記や滑稽な物語、古い浄瑠璃のスタイルを残す語り物音楽で、琵琶の音と自分の声で物語を構成されます。
南関町地域おこし協力隊の岩下小太郎さんが、肥後琵琶という郷土の芸に触れたのは20歳の時、力強く迫力のある情感豊かな肥後琵琶の語りと奏法に強く惹かれ、この文化を途絶えさせてはいけないと肥後琵琶の継承を決意されたとのことです。
琵琶という楽器を知らない方が増えている現在、肥後琵琶を演奏する人も少なく、それが聴ける場所はそんなに多くありません。そんな中、岩下さんはその演奏法と物語の保存に力を尽くしながら、肥後琵琶を聴ける体験を色んな人に届けたい!と活動しています。
現在、南関町役場で婚姻記念証を取得する際に肥後琵琶でのお祝いを希望できるシステムや南関御茶屋跡での演奏体験コース、学校公演など活動の幅を広げ、肥後琵琶を文化観光資源として広く普及しています。
また肥後琵琶における楽曲の復活や儀式慣例を復活させようと日々精進されています。2022年1月に新庁舎が開庁した南関町庁舎のお祝いとして、新築祝い「わたまし」の30年ぶりの復活や新たな肥後琵琶奏者の発掘などこれからの肥後琵琶の継承などに積極的です。
「郷土の芸能である肥後琵琶をまずは熊本県民の皆さんに知っていただき、この芸能を是非愛していただけるように精進を重ねて参ります。」と、はにかんだ岩下さんは今日も肥後琵琶を演奏しています。
Information
肥後琵琶の演奏依頼やご相談などはメールやDMでお願いします。
岩下 小太郎(いわした こたろう)
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